とうとう、あきこのケニア滞在最終日です。
ひさこがナイロビ滞在時代にお世話になった、NPO法人イルファーの稲田頼太郎先生の診療所を訪問しました。稲田先生は「Doctor」のスワヒリ語「ダクタリ」と呼ばれていますので、ここでもそのように呼ばせていただきます。
ダクタリはナイロビのスラム街・プムワニ地区でHIV患者の研究活動を行っています。この日はダクタリの運転する車で、ナイロビの渋滞を潜り抜け(ナイロビはいつも大渋滞!)、30分ほどでプムワニに到着。
ここはイスラム教徒が多く住んでいて、診療所のある建物の中にも礼拝所があります。患者さんを診る前に、ダクタリが診察所を案内してくれました。診察台や本棚はダクタリの手作り!既製品だと思いましたよ!
さて、この診療所に通っているのは、HIVに感染している患者さんです。HIVに感染したら死んでしまうというのはひと昔前の話で、今はきちんとした処方を受けて薬を飲み続ければエイズを発症して亡くなることはありません。
…ここで疑問です。
ダクタリはこの診療所で患者さんを無料診察しますが、薬は出しません。患者さんはダクタリの診断書を持って、わざわざ、ケニア人医師のいるかかりつけの病院へ行き、お薬をもらうのです。ケニアでHIVの薬はタダなのにどうしてでしょう?!
ダクタリ曰く、この診療所の目的は、患者さんに定期的な通院の重要性を理解してもらうこと、そしてケニア人の医者には、いろいろな症例をカルテから学び、その知識を他の患者に応用してもらうことなのです。患者さんのケアだけでなく、ケニアの医療従事者もダクタリの活動をから学習してほしい、と。「先進国では、エイズで人が死ななくて済むようになった。なのにアフリカでは、まだまだこの病で人が命を落としている。NYでの長年の経験や知識を生かして、人が人として、健康で元気に生きることができるように…」という大きな願いを語っておられました。
薬を飲んで体調がよくなった患者さんの中には「これで病気が治った!」と勝手に思い込み、通院をやめ病状が悪化する人もいるそうです。通院して薬を飲み続けながら生きることで、薬の重要性、HIVについて多くの人に理解してもらい、そして医者は患者の体調・病状に合う薬の処方を学び治療に生かす…ケニアの未来を考えているんですね。ダクタリ、ありがとうございます!
今、診療所に常駐しているのはダクタリとケニア人スタッフ2名ですが、9月の連休には日本からイルファー主催でボランティアの医師団がやってくるそうです。詳しくは、NPO法人イルファーのホームページをご覧ください。遠いケニアの地で未来のために力を尽くしているダクタリとその仲間を一緒に応援しましょう!