今回、訪問させていただいたのは、ケニアが独立して間もない頃に、紅茶を始めたというパイオニア的な農家のンカナタさん。茶畑のサイズも平均的(約20アール)で、この7月に剪定をした茶畑に案内してくださいました。ケニアの会計年度は6月末で、7月になると紅茶の仕事が一段落するというのと、気温が下がるので、茶の成長がゆるやかになります。なので7~8月に、茶畑の一部(全体の1/3程度)を剪定します。
茶畑をひととおり見せていただいたあと、「ケニア流のおもてなしで、ぜひチャイを飲んでいってほしい」とご招待をいただきました。お断りするのは失礼ですから、スケジュールが押せ押せになるのを覚悟で、ティータイムを楽しませていただきました。奥さまのジェニファーさんが、チャイと食パンを用意。お茶を飲みながら歓談していると、今回の私たちの訪問をとても楽しみにしていたと、喜んで話してくださいました。
そして、初めて紅茶の樹を植えた1964年頃の話もしてくださいました。紅茶農家のパイオニアと呼んだ理由を少し説明させていただきますが、1963年のケニア独立前は、地元のケニア人農家は、換金作物(紅茶やコーヒーなど)の栽培は、イギリス植民政府の許可がないとできませんでした。独立の際、地元の小規模農家にも紅茶栽培で現金収入を得られるようにと、KTDA(ケニア紅茶開発局/当時は国営)が組織され、一般のお百姓さんも紅茶を栽培、茶葉を売ることで収入を得られるようになりました。
ただ当時は、茶の栽培がうまく行くのかどうか、不安だった農家も多かったので、そんな中、ンカナタさん一家は紅茶を植えはじめ、地域のみんなのモチベーションを上げていったそうです。パイオニアとして、地域の農家を勇気づけたこの家族の役割は、とても大きかったと感動。不安を乗り越え、これまで紅茶を育ててきてくださったことに感謝しながら、チャイをいただきました。なんとチャイは、砂糖入りと砂糖なしを選べるように準備してくださったので、それも驚きました。ケニアの農村部でも、糖分に気をつけて生活しているんですね!
こんなふうに、みんなでゆったりチャイをいただきながら、紅茶の歴史やお仕事の話を伺うのは、とても貴重で新鮮な経験でした。